更新日<7月27日>
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  水環境の保全


1 環境保全上健全な水循環の確保
2 水利用の各段階における負荷の低減
3 閉鎖性水域等における水環境の保全
4 海洋環境の保全
5 水環境の監視等の体制の整備










1 環境保全上健全な水循環の確保

 水質汚濁に係る環境基準の項目、基準値、水域類型指定の見直し等に関し、必要な調査検討を行う。また、水域の利用目的の変化等を踏まえ、生活環境項目に係る環境基準等の類型指定の見直しを推進する。さらに、平成9年3月に設定された地下水に係る環境基準の達成・維持に向けた地下水の水質保全対策を推進する。水生生物への影響にも留意した環境基準等の目標については調査検討を推進する。環境基準の病原微生物指標(大腸菌群数)の見直しを含めた検討を行う。また、流域別下水道整備総合計画等水質保全計画を策定し、効率的な汚濁負荷削減施策を推進する。

 森林や農地の適切な維持管理や河川、湖沼における自然浄化能力の維持・回復のための水質、水生生物等の生息環境、水辺地植生等の保全や水量の確保、都市域における下水処理水等の効果的な利用や雨水の適正な地下浸透を進めるとともに自然海岸、干潟、藻場、浅海域の適正な保全や人工干潟・海浜の整備を推進すること等を通じ、環境保全上健全な水循環機能の維持・回復を推進する。

 水質面のみならず、水量、水生生物、水辺地を含めた総合的な取組を進めるため、引き続き水循環に関する連携の在り方や施策の推進方策等についての検討を行う。手賀沼地域において、水循環の回復を図るため各種調査及び検討を実施する。また、各種開発行為や異常気象により、流域にわたり水環境への悪影響が生じた事例につき、調査を行い、対策を検討する。地下水を中心とする水循環の診断・評価基準や回復手法の検討を行う。さらに、新しい全国総合水資源計画の考え方を踏まえ流域圏等を単位とした健全な水循環の確保のための計画策定を支援、推進する流域水循環健全化プログラムとして、モデル流域圏において関係行政機関と連携して水循環に関する調査を行い、流域水循環健全化のために計画策定を行うに当たっての指針を策定する。また、その一環として、流域における地下水の適正な管理手法及び水の有効利用の在り方等を検討する。

 さらに、地域の実状に応じ、住民が水環境保全のため積極的な取組を行うことを促すため、住民による水辺環境保全活動を支援する方法等の検討や、失われた水辺環境の再生、地下水かん養施設の設置等による枯渇しつつある井戸・湧水の復活など水環境と住民のより良いふれあいを確保するための場の整備を推進する。

 また、地域住民の参加を得て、全国の河川において水生生物による水質調査を推進する。
平成12年版・環境白書(各論)より
2 水利用の各段階における負荷の低減

(1)発生形態に応じた負荷の低減


 工場・事業場については適切な排水規制を行う。また、排水規制の対象となっていない業種についてその実態調査を実施し、規制の必要性の検討を進めるとともに、未規制項目の調査・検討を行う。さらに、従来の排水規制だけではなく、有害物質を使用しない代替工程の検討や小規模事業場対策として規格化された処理施設の開発等、新たな対策の枠組みづくりを進めていく。また、水の循環利用等を組み込んだ生産工程の導入や建築物等における水の循環利用等を促進する。

 生活排水による水質の汚濁の防止を図るため、下水道整備を促進するほか、地域の実状に応じて、都道府県毎に策定された汚水処理施設の整備等に関する「都道府県構想」に基づき、合併処理浄化槽、農業集落排水施設、コミュニティ・プラント等各種生活排水処理施設の整備をより一層推進する。

 水質汚濁防止法に基づき、生活排水対策のための事業に対する助成を行う。

 また、「水環境フォーラム」の開催等全国的な普及啓発活動、簡易な水質診断手法の推進に関する調査等多面的できめ細かい生活排水対策の施策の展開を図る。

 さらに、非特定汚染源による水質汚濁の実態を把握し、その汚濁負荷の削減対策手法に関する調査研究を実施する。


(2)負荷低減技術の開発・普及

 下水道や合併浄化槽、農業集落排水施設の高度処理技術の一層の開発・普及を図るとともに、植生の水質浄化機能を活用した安価な水質浄化技術や、小規模処理事業場に適用が可能な、安価で汎用性のある排水処理施設の開発を推進する。

 合併処理浄化槽については、膜分離技術を活用した小型合併処理浄化槽の普及に向けて、維持管理面からの技術的な検討等を行う。


(3)水環境の安全性の確保

 有害物質に係る排水規制、地下浸透規制等を適切に実施するとともに、適正な廃棄物処理の推進を図る。

 農薬については、水田で使用される農薬についての水質汚濁に係る農薬登録保留基準の設定を引き続き進めるとともに、水田以外で使用される農薬についても当該基準の設定方法について検討を進める。また、農薬の生態影響については、今後検討を進め、施策の具体化に向けた検討を行っていくこととしている。

 地下水に関しては、平成8年の水質汚濁防止法の改正により導入された汚染された地下水の浄化制度等に基づき、地下水浄化の着実な実施を図る。また、有害物質による地下水汚染機構解明に関する調査、汚染された地下水の浄化対策技術に関する調査等を実施する。さらに、硝酸性窒素による地下水汚染については、モデル地域において負荷低減総合対策計画の策定及び効果的な浄化システムの開発に係る調査を行う。

 有害物質に汚染された海域等の底質については、除去等の対策を適切に実施する。

平成12年版・環境白書(各論)より


3 閉鎖性水域等における水環境の保全

 水質改善が依然として進んでいない河川や閉鎖性水域等については、所要の調査解析等を行う。

 また、水質汚濁の著しい都市内河川、水道水源水域等の水質改善を図るため、水質汚濁防止法等に基づく排水規制、下水道等生活排水処理施設の整備や住民参加等による生活排水対策、河川等における浄化対策や流量の確保等の各種の施策を総合的に実施する。さらに身近な水辺の整備により、住民が水とふれあう機会を増やして住民一人一人の意識啓発を図る。

 湖沼については、「湖沼水質保全特別措置法」に基づく「湖沼水質保全計画」の策定されている琵琶湖や霞ヶ浦等10湖沼について、同計画に基づき、各種規制措置のほか、下水道の整備その他の事業を総合的・計画的に推進する。

 また、農地・市街地等の非特定汚染源から発生する汚濁負荷対策の効果を検討する調査等を行うとともに、指定湖沼における汚濁負荷量削減状況の把握に努める。さらに、雨天時に宅地や道路等の市街地から公共用水域に流入する汚濁負荷を削減するために新世代下水道支援事業制度水環境創造事業を推進するとともに、ヨシ等の生態系を活用した水質浄化施設の整備を進め、水質改善が緊要な湖沼について底泥処理など水質浄化対策の調査を行う。

 東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海においては、今後とも汚濁負荷量の一層の削減を図ることが必要であり、従来の化学的酸素要求量(COD)に加えて、新たに窒素及び燐を対象とした第5次水質総量規制の実施に向け検討を進める。

 湖沼及び海域の富栄養化対策として、全窒素及び全燐に係る環境基準類型指定を進めるとともに、富栄養化等の状況の把握及び窒素・燐の発生源対策に関する調査を行う。

 瀬戸内海については、「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づき、窒素及び燐に係る削減指導等の富栄養化防止対策、自然海浜の保全などの諸施策を引き続き推進する。また、従来の規制を中心とした保全型施策の充実に加え、失われた良好な環境を回復させる施策の展開等を図るため、瀬戸内海環境保全基本計画の変更について検討を進める。

 また、有機性汚泥が蓄積している河川、湖沼、港湾等の水域についてはしゅんせつ等の浄化対策を適切に実施する。

平成12年版・環境白書(各論)より


4 海洋環境の保全

 1994年(平成6年)11月に発効し、平成8年6月に我が国が締結を行った「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)の趣旨を踏まえ、排他的経済水域(最大限200海里の海域)をも考慮し、海洋生態系の保全を含めた海洋環境保全のための施策の充実強化を図る。

(1)未然防止対策

 未然防止対策としては、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海洋汚染防止法」という。)に基づき、ばら積み輸送される未査定液体物質の査定等を行う。また、漂流・漂着するプラスチック類の実態調査等を踏まえ、発生源対策をとりまとめる。

 また、近年における海洋環境問題が主として日常生活に伴う環境への負荷によって生じるものであることから年2回の「海洋環境保全推進週間」等を利用して、海事、漁業関係者のみならず広く一般市民に対し、海洋環境保全思想の普及啓発に努めるとともに、海洋環境保全講習会等を通じて、関係者に対する指導を引き続き実施する。

 巡視船艇・航空機の効率的な運用等により厳重な監視取締りを行うとともに、監視取締用資器材の整備等、監視取締体制の充実強化を図る。さらに、船舶の不法投棄については、「廃船指導票」を貼付することにより、投棄者自らによる適正処分の促進を図る。

 さらに、漁場として重要な藻場・干潟の実態を調査するとともに、消長原因究明のための調査、森林・河川からの流入水等が藻場・干潟に及ぼす影響調査を実施するほか、一般市民等への漁場環境保全のための啓発普及活動を行う。また、効率的な海浜及び漁場の美化を総合的に推進するための計画策定、指導員の養成、廃棄物の除去等を行う漁場環境保全推進事業等に助成する。さらに、開発等により失われる藻場・干潟等の人工代替物の実例把握、実態調査及び技術評価を行い漁場環境の維持・修復方策について検討する。このほか「漁場環境保全の在り方」の考え方を整理するとともに、それらの成果をも踏まえた漁場環境への影響評価を実施する。

(2)排出油等防除体制の整備


 環境保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、?情報収集・提供システムの整備、?関係地方公共団体、環境NGO等に対する研修・訓練の実施、?傷病鳥獣の適切な救護体制の整備、?油処理剤等の海洋環境への影響調査等を推進する。

 また、重油流出事故等の状況把握のための衛星データ利用研究を、宇宙開発事業団において実施する。

 大規模石油災害時に災害関係者の要請に応じ油濁災害対策用資機材の貸出しを行っている石油連盟に対して、当該資機材整備等のための補助を引き続き行う。

 また、漁場保全の観点から油汚染事件発生に的確に対応するため、?油回収資機材の整備、?関係都道府県等に対する汚染防止機材の整備への助成、?漁業影響情報図の作成・情報提供、?防除指導者の育成のための講習会及び実地訓練等への助成を行う。

 運輸技術審議会「流出油防除体制総合検討委員会」の報告書に基づき、外国船舶の立入検査強化等事故の再発防止対策や、防除資機材の開発・整備等流出油防除対策についても推進する。

 また、海上における油等の排出事故に対処するため、巡視船艇・航空機の常時出動体制の確保及び防除資機材の整備の充実を図るとともに機動防除隊の業務執行体制の強化、海上災害防止センターへの指導、排出油防除に関する協議会等の組織化・広域化の推進及びこれらの協議会との連携のもとに行う各種訓練等の内容の充実を図ることにより、官民一体となった排出油防除体制の充実を図る。また、漂流予測体制の強化を引き続き図る。さらに、沿岸域における情報整備として「沿岸海域環境保全情報」の整備を引き続き行い、データベースの情報の充実を図る。

 油等の海上浮遊物の防除活動に資するため、一週間程度の長期にわたる漂流予測情報の提供体制の充実についても図っていく。

(3)赤潮防止対策

 赤潮防止対策としては、ヘテロカプサ等有害プランクトンにより引き起こされる赤潮に対して、漁業被害の防止のための技術開発等を行うヘテロカプサ赤潮等緊急対策事業等を実施するとともに、赤潮発生状況等の調査等を強化する事業について助成する。

(4)漁業被害救済対策

 原因者不明の油濁事故に対処するため、(財)漁場油濁被害救済基金の救済事業等に助成を行う。また、漁業共済制度において養殖共済の赤潮特約に係る純共済掛金について助成を行う。

平成12年版・環境白書(各論)より

5 水環境の監視等の体制の整備


(1)公共用水域の監視測定体制の整備

 水質汚濁防止法に基づき都道府県知事が行う公共用水域の水質常時監視のための測定計画の作成及びこれに基づき地方公共団体が行う水質測定に助成を行う。また、全国の一級河川の主要な水域について水質監視を行う。そのほか、工場・事業場の排水基準の遵守状況を監視するために必要な経費について助成を行う等公共用水域の水質の監視測定のための各種施策を推進する。

(2)住民の協力を得た調査の実施

 昨年度見直した水生生物による簡易水質調査を推進し、実施に当たっては都道府県の環境部局及び地方建設局河川関係事務所の指導のもとに一般市民の参加を得て行う。また、水生生物等により水環境を総合的に評価する手法についての検討を行う。

(3)地下水の監視測定体制の整備

 地下水に関しては、水質汚濁防止法に基づき都道府県知事が作成する地下水の水質測定計画に基づき地方公共団体が実施する水質測定に助成を行うとともに、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき都道府県知事が実施する常時監視のための調査測定に関しても助成を行う。

(4)海洋環境保全のための監視・調査

 地球規模の環境問題への対応としては、海洋環境保全のための総合的な調査や、海洋バックグランド汚染観測を実施するとともに、海洋に排出された有害液体物質を迅速に特定するための体系的分析手法に関する研究を行う。また、酸性雨による陸水生態系への影響等の把握に関する調査を実施する。

 我が国周辺海域の海洋環境の現状を把握するとともに、国連海洋法条約の趣旨を踏まえ、領海、排他的経済水域における生態系の保全を含めた海洋環境の状況の評価・監視のための総合的・系統的な海洋環境モニタリングを行う。

 また、我が国周辺海域、海洋汚染防止法に定める排出海域(A海域)や閉鎖性の高い海域等において海水及び海底堆積物中の油分、重金属等のほか、環境ホルモン物質としても注目されているPCBの海洋汚染調査を実施する。

 日本周辺及び西太平洋海域において、海水温、海流等の海洋観測を行うほか、海水中の重金属、油分等の海洋汚染物質の定期観測を引き続き実施する。

 水産庁では、内分泌かく乱物質による海産生物への影響評価を可能とする手法の開発及び魚介類への影響実態把握等を実施する。また、魚介類中のダイオキシン類の効果的な削減方策の検討及び魚介類中におけるダイオキシン類の蓄積状況の全国的な実態把握等を行う。

 また、複数が集中して立地する発電所の大量取放水による広域の漁業資源への影響についての検討等を行う。

 さらに、漁場の健康診断としての長期的な環境監視調査、油濁・赤潮等の発生監視調査を一体的に実施し、総合的な漁場環境監視体制を確立するとともに、漁業者自身が行う簡単な採水調査の実施、観測機器の整備等、漁業者による監視調査への参加を促進する事業について助成する。

平成12年版・環境白書(各論)より